チームの非協力的な態度にどう向き合う?生産性を高めるアサーションでの伝え方
チームの非協力的な態度に直面したとき
ビジネスシーンにおいて、チームメンバーとの連携はプロジェクト成功の鍵となります。しかし、中には情報共有が滞る、タスク分担に消極的である、会議で発言しないなど、チームの和や生産性を阻害するような非協力的な態度に直面することもあるかもしれません。
真面目に仕事に取り組む方ほど、このような状況にストレスを感じやすく、どのように改善を求めれば良いか悩んでしまうことがあります。直接指摘すれば角が立つかもしれない、関係が悪化するのではないか、と考えてしまい、結局何も言えずに一人で抱え込んでしまうケースも少なくありません。
ですが、非協力的な態度を放置することは、個人の負担を増やすだけでなく、チーム全体の士気を低下させ、プロジェクトの遅延や失敗に繋がる可能性もあります。このような難しい状況でこそ、アサーションスキルが役立ちます。
非協力的な態度へのアサーションが重要な理由
アサーションは、相手を尊重しながら、自分の考えや要求を正直かつ適切に伝えるコミュニケーションスキルです。非協力的な態度に対してアサーションを用いる目的は、相手を責めることではなく、その行動がチームやあなた自身に与える影響を伝え、建設的な改善を促すことにあります。
非難や攻撃的な伝え方は、相手を防御的にさせ、事態を悪化させる可能性が高いです。一方、アサーションでは、感情的にならずに事実に基づき、I(私)メッセージを用いて自分の感じていることやニーズを伝えます。これにより、相手に耳を傾けてもらいやすくなり、対話を通じて解決策を見出す可能性が高まります。
具体的なビジネスシーンでのアサーション表現
チームメンバーの非協力的な態度は様々ですが、ここではいくつかの代表的な場面を取り上げ、アサーションを用いた伝え方をご紹介します。ポイントは、行動を客観的に描写し、それが自分やチームに与える影響を伝え、「私」を主語にして感じていることを表現し、具体的な要求を伝えることです。
場面1:情報共有が滞っているメンバー
状況: プロジェクトの進捗や必要な情報共有が特定のメンバーから遅れることが多い。それが原因で、自分のタスクや次の工程が進められない。
非アサーティブな例: * (何も言えずに自分で情報を探し回る、またはイライラを募らせる) * 「また情報が来てないんだけど!どうなってるの?」
アサーティブな表現例:
「〇〇さん、共有をお願いしていた資料(行動の描写)がまだ届いておらず、次の作業(影響)に進められずに困っています(感情/影響)。お手数ですが、本日中に共有していただけますでしょうか(具体的な要求)。もし遅れる場合は、いつ頃になるか教えていただけますと助かります。」
このアサーション表現を選ぶ理由: - 相手の行動を客観的に描写し、非難ではなく事実に焦点を当てています。 - その行動が「私」や「私のタスク」にどのような「影響」を与えているかを具体的に伝えています。 - 感情的にならず、「困っています」「助かります」といった「私」の状況やニーズを伝えています。 - 具体的な要求(本日中の共有、または遅れる場合の期日)を明確に伝えています。
場面2:タスク分担や協力要請に消極的なメンバー
状況: チームで協力して進めるべきタスクや、特定のメンバーへの協力要請に対して、曖昧な返答をしたり、結局対応しなかったりする。
非アサーティブな例: * 「手伝ってくれませんか?」→曖昧な返事→「まあ、いいか…(結局自分でやる)」 * 「いつも手伝ってくれないよね。全然協力的じゃない。」
アサーティブな表現例:
「〇〇さんに担当をお願いしているこのタスク(行動の描写)について、進捗がまだ確認できていない状況(状況の描写)です。このタスクは△△の完了(影響)に必要不可欠なので、少し心配しています(感情)。現在の状況を教えていただけますでしょうか(具体的な要求)。もし難しい点があれば、一緒に対応策を検討することも可能です。」
このアサーション表現を選ぶ理由: - 相手の行動(タスクの進捗が確認できていないこと)を事実として述べています。 - そのタスクがチーム全体の目標(△△の完了)にどう影響するかを伝えています。 - 「心配しています」と「私」の感情や懸念を伝えています。 - 状況の確認という具体的な要求に加え、解決に向けた協力の意思も示唆しています。
場面3:会議での無関心・非協力的な態度
状況: 会議中に発言を求められても沈黙したり、他のメンバーの意見に興味を示さなかったりする。議論への参加が少なく、決定事項へのコミットメントが低いように見える。
非アサーティブな例: * (会議後、他のメンバーとそのメンバーの態度について愚痴を言う) * 「もっと真剣に会議に参加してください!」
アサーティブな表現例:
「〇〇さんの、この議題(状況の描写)に対するお考えを伺いたいと思っております(要求/意図)。〇〇さんの視点(影響)はチームの意思決定にとって重要だと考えております(価値付け)。もし発言しにくい点があれば、会議後に個別にお聞かせいただくことも可能ですが、いかがでしょうか(代替案の提示/配慮)。」
このアサーション表現を選ぶ理由: - 具体的な議題に焦点を当て、相手の発言を求めています。 - 相手の視点がチームにとって価値があることを伝え、発言することの重要性を間接的に示しています。 - 直接的な非難ではなく、「お考えを伺いたい」「重要だと考えている」といった「私」の期待や評価を伝えています。 - 公の場での発言が難しい可能性も考慮し、代替案も提示しています。
アサーションスキルを向上させるための練習方法
非協力的な態度に対するアサーションは、相手の行動に踏み込むため、特に難易度が高いと感じるかもしれません。しかし、適切な練習を積むことで、よりスムーズに伝えられるようになります。一人で取り組める練習方法をいくつかご紹介します。
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「事実」と「評価・解釈」を区別する練習:
- チームメンバーの非協力的な行動を目撃したら、「〇〇さんは、会議中に一度も発言しなかった(事実)」と「〇〇さんはやる気がない(評価・解釈)」のように、事実と自分の評価・解釈を分けて書き出してみましょう。アサーションでは、「事実」に焦点を当てることが重要です。
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「影響」を具体的に言語化する練習:
- その非協力的な行動が、自分やチームにどのような具体的な影響を与えているかを書き出してみましょう。「情報共有が遅れているせいで、次のステップである資料作成に取りかかれず、納期に影響が出る可能性がある」「協力してもらえないことで、私の担当業務が増え、他の重要なタスクに時間を割けなくなっている」のように、感情論ではなく具体的な影響を考える練習です。
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Iメッセージの表現を組み立てる練習:
- 「〇〇さんが△△という行動をとったとき、私は□□という影響を受け、●●と感じています。つきましては、〜をしていただけますでしょうか。」というテンプレートを使って、実際に伝える内容を組み立ててみましょう。声に出して練習すると、より自然な表現が見つかります。
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スモールステップでの実践:
- いきなり難しい場面で使うのではなく、まずは小さなことから練習してみましょう。例えば、「〇〇さんが席を外している間に電話がかかってきた件について、伝言メモを渡しておきましたが、見ていただけたか確認させてください」のように、比較的プレッシャーの少ない確認から始めてみるのも良いでしょう。
アサーションを行う上での心構え
非協力的な態度へのアサーションは、相手との関係性に影響を与える可能性もゼロではありません。以下の点に留意することで、より建設的に進めることができます。
- 目的を明確にする: 相手を攻撃することではなく、チームの機能や生産性を向上させること、健全な働き方を維持することが目的であることを忘れないでください。
- 冷静さを保つ: 感情的にならず、落ち着いて事実と自分の状況を伝えましょう。
- 相手の反応を予測する: 相手がどう反応する可能性があるかを事前に少し考えておくと、心の準備ができます。
- 関係性の維持も意識する: アサーションは自己主張と同時に相手への配慮も含むスキルです。伝え方によっては相手との関係にひびが入る可能性も考慮し、言いっぱなしではなく、対話の姿勢を持つことが大切です。
まとめ
チーム内の非協力的な態度にどう向き合うかは、多くのビジネスパーソンが直面する課題です。一人で抱え込んだり、感情的に対応したりするのではなく、アサーションを用いて、その行動がもたらす影響を建設的に伝え、改善を促すことが、チーム全体の生産性向上と健全な協力関係の構築に繋がります。
今回ご紹介した具体的な表現例や練習方法が、皆さまがより良いチーム環境を築くための一助となれば幸いです。小さな一歩からでも、ぜひ実践を始めてみてください。