チームで成果を出す!タスク依頼・協力要請を円滑にするアサーション術
チームでのタスク依頼や協力要請、スムーズに行えていますか?
チームで業務を進める際、メンバー同士の協力は不可欠です。しかし、「忙しそうな人に頼みごとをするのが申し訳ない」「断られたらどうしよう」「自分でやった方が早い」といった理由から、タスクを依頼したり協力を求めたりすることに抵抗を感じ、結局一人で抱え込んでしまうという方も少なくないのではないでしょうか。
業務が属人化し、特定のメンバーに負荷が集中すると、チーム全体の生産性が低下するだけでなく、自身の業務過多にも繋がりかねません。このような状況を改善し、チームで効果的に成果を上げていくためには、「依頼する」「協力を求める」というコミュニケーションスキルが非常に重要になります。
依頼・協力要請におけるアサーションの重要性
アサーションとは、相手を尊重しつつ、自分の考えや気持ち、要求を誠実に伝えるコミュニケーションスキルです。単なる自己主張とは異なり、相手の権利も同様に尊重する姿勢を持ちます。
依頼や協力要請の場面でアサーションを活用することで、以下のようなメリットが得られます。
- 依頼内容が明確に伝わる: 目的や背景、期待する成果を具体的に伝えることで、相手の理解を助け、誤解を防ぎます。
- 相手の状況や意向を尊重できる: 相手の現在の業務状況やスキルを考慮し、一方的な押し付けではない依頼が可能です。
- 協力関係を構築できる: 相手への感謝や信頼を伝えることで、良好な関係性を保ちながら協力体制を築くことができます。
- 相手の「ノー」も受け止められる: 相手が依頼に応じられない場合でも、感情的にならずに代替案を検討するなど、建設的な対話が可能です。
アサーションを用いた依頼は、単にタスクを割り振る指示や命令とは異なります。相手への配慮とリスペクトを示すことで、信頼関係を築き、チーム全体の協力意識を高めることに繋がるのです。
具体的なビジネスシーン別:アサーションを用いた依頼・協力表現
ここでは、チーム内でよくあるタスク依頼や協力要請の場面を想定し、具体的なアサーション表現とそのポイントをご紹介します。
シーン1:特定のタスクをメンバーに依頼したい
新しい業務や特定のプロジェクトタスクをメンバーにお願いしたい場面です。依頼内容、期日、目的などを明確に伝える必要があります。
アサーション表現の例:
「〇〇さん、今週のプロジェクト△△の顧客提案資料の作成についてご相談があります。この資料は来週の月曜日にクライアントへ提出する必要があり、〇〇さんのこれまでの提案資料作成スキルをぜひお借りしたいと考えています。もし可能であれば、今週中に叩き台を作成していただけないでしょうか?もしお忙しいようでしたら、その旨お教えいただけますと幸いです。作成にあたって必要な情報やサポートは私が準備します。」
表現を選ぶ理由・ポイント:
- 相談の形式: 「ご相談があります」と切り出すことで、一方的な命令ではない姿勢を示します。
- 目的と背景の提示: 「来週の月曜日にクライアントへ提出する必要があり」と、なぜこの依頼が必要なのかを伝えます。
- 相手のスキルの尊重: 「〇〇さんのこれまでの提案資料作成スキルをぜひお借りしたい」と具体的に相手の能力を評価し、依頼する理由を明確に伝えます。これにより、相手は「自分が貢献できる」という気持ちになります。
- 具体的な依頼内容と期日: 「叩き台を作成」「今週中に」と、何をいつまでにやってほしいかを明確に伝えます。
- 相手への配慮: 「もしお忙しいようでしたら、その旨お教えいただけますと幸いです」と、相手の状況への配慮を示し、断る余地を与えることで心理的な負担を軽減します。
- サポートの申し出: 「必要な情報やサポートは私が準備します」と伝えることで、依頼して終わりではなく、協力する姿勢を見せます。
シーン2:専門知識を持つメンバーに協力を仰ぎたい
特定の分野で専門知識や経験を持つメンバーに、アドバイスや作業協力を依頼したい場面です。相手の専門性を尊重し、協力を得たい理由を具体的に伝えることが重要です。
アサーション表現の例:
「△△さん、先日の社内システムに関する改修の件で、技術的な知見をお借りできないでしょうか。特に〇〇機能の実装について、△△さんの以前のプロジェクトでの経験が非常に参考になると考えております。つきましては、15分程度お時間をいただき、現状の問題点と実現したいことについてご説明させていただき、アドバイスをいただけないでしょうか。△△さんのご都合の良い日時をいくつかお教えいただけると助かります。」
表現を選ぶ理由・ポイント:
- 相手の専門性への言及: 「△△さんの以前のプロジェクトでの経験が非常に参考になると考えております」と、なぜその人に依頼するのか、具体的な理由を伝えます。相手の専門知識や貢献を高く評価していることを示します。
- 具体的な内容と必要な時間: 「〇〇機能の実装について」「15分程度お時間をいただき、…ご説明させていただき、アドバイスをいただけないでしょうか」と、何をどのように協力を求めているかを具体的に伝えます。
- 相手の都合への配慮: 「△△さんのご都合の良い日時をいくつかお教えいただけると助かります」と、相手に日程調整の主導権を委ねることで、協力しやすい環境を作ります。
シーン3:忙しいことが分かっているメンバーに協力を頼む
すでに多くの業務を抱えていることが分かっているメンバーに、どうしても協力を依頼したい場面です。相手の状況を理解していることを示しつつ、協力が必要な状況を誠実に伝える必要があります。
アサーション表現の例:
「◇◇さん、お忙しいところ大変恐縮なのですが、一点ご相談があります。現在進めている□□のタスクで、急な仕様変更があり、期日までに完了させるのが難しくなってしまいました。特に××の工程で人手が必要な状況です。◇◇さんも多くの業務を抱えていらっしゃることは承知しております。もし可能であれば、××の工程の一部(具体的な作業内容)をお手伝いいただけないでしょうか?もし厳しいようでしたら、別の方法を検討いたしますので、率直にお教えいただけますと幸いです。」
表現を選ぶ理由・ポイント:
- 相手の状況への共感と配慮: 「お忙しいところ大変恐縮なのですが」「◇◇さんも多くの業務を抱えていらっしゃることは承知しております」と、相手の忙しさを理解していることを明確に伝えます。
- 自分の状況と必要な理由の明示: 「期日までに完了させるのが難しくなってしまいました」「××の工程で人手が必要な状況です」と、なぜ協力が必要なのか、具体的な状況を説明します。感情論ではなく、事実に基づいた説明を心がけます。
- 具体的な依頼内容と範囲: 「××の工程の一部(具体的な作業内容)」と、具体的に何をお願いしたいかを伝えます。依頼する範囲を限定することで、相手が引き受けやすいように配慮します。
- 代替案の検討姿勢と相手の意思尊重: 「もし厳しいようでしたら、別の方法を検討いたします」「率直にお教えいただけますと幸いです」と伝え、相手が断ることも想定内であることを示し、プレッシャーをかけすぎないようにします。
シーン4:依頼したタスクの進捗を確認したい
メンバーに依頼したタスクの状況が気になり、進捗を確認したい場面です。催促や管理ではなく、あくまで協力的な姿勢で状況を共有してもらうことを目的とします。
アサーション表現の例:
「〇〇さん、以前お願いした△△の件ですが、現在の進捗状況はいかがでしょうか?何か困っていることや、私にサポートできることはありますか?期日(具体的な期日)までに完了できるよう、何かあれば遠慮なくおっしゃってください。」
表現を選ぶ理由・ポイント:
- 目的の明確化: 進捗確認だけでなく、「何か困っていることや、私にサポートできることはありますか?」と、サポートが必要かどうかの確認を主な目的とします。
- 協力的な姿勢: 「サポートできることはありますか?」「何かあれば遠慮なくおっしゃってください」と伝えることで、相手を管理するのではなく、共に目標達成を目指す協力者としての姿勢を示します。
- 期日の再確認(必要な場合): 「期日(具体的な期日)までに完了できるよう」と触れることで、目標期日を共有します。
アサーションを用いた依頼・協力要請スキル向上のための練習方法
アサーションスキルは、実践的な練習によって身につけることができます。一人でも取り組める方法をいくつかご紹介します。
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依頼内容の「見える化」練習:
- 誰に何を依頼したいのか、紙やメモ帳に書き出してみましょう。
- 依頼の目的、具体的な内容、期日、相手にお願いしたい理由(相手のスキルや貢献への期待など)、相手への配慮事項(忙しさへの言及、サポートの申し出など)といった要素を整理します。
- この書き出し作業を通じて、頭の中が整理され、より具体的で説得力のある依頼ができるようになります。
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アサーション表現の「声出し」練習:
- 上記1で整理した依頼内容に基づき、実際に口に出して依頼の言葉を言ってみましょう。
- スマートフォンの録音機能などを使って自分の声を聞いてみるのも効果的です。声のトーンや話し方を確認できます。
- 可能であれば、信頼できる同僚や友人とロールプレイングを行い、依頼する側・される側の両方を体験してみるのも良い練習になります。
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スモールステップでの実践:
- いきなり重要度の高い依頼から始めるのではなく、まずは「少し時間ありますか?」「この資料のここ、どうなっていますか?」といった、比較的プレッシャーの少ない簡単な協力依頼から試してみましょう。
- 成功体験を積み重ねることで、自信を持って次のステップに進むことができます。
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相手の状況を「観察」する習慣:
- 依頼する前に、相手が今どのような業務に取り組んでいるか、忙しい様子かなどを観察する習慣をつけましょう。
- これにより、「今、話しかけても大丈夫そうか」「忙しそうだから、後でメールで丁寧に依頼しよう」といった判断ができ、相手への配慮が自然とできるようになります。
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依頼後の「振り返り」:
- 依頼がうまくいった場合、なぜうまくいったのか(表現が明確だったか、相手の状況を考慮できたかなど)を振り返ります。
- うまくいかなかった場合も、何が課題だったのか(依頼内容が曖昧だったか、一方的だったかなど)を分析し、次に活かせるようにします。
チームの協力を引き出すアサーションの心構え
アサーションを用いた依頼を実践する上で、以下の心構えを持つことが大切です。
- 完璧を目指さない: 最初から完璧なアサーションができる必要はありません。少しずつ意識して、表現や伝え方を改善していきましょう。
- 相手の反応を恐れすぎない: 相手が依頼に応じられない場合でも、それは相手の権利です。その場合も冷静に状況を聞き、代替案を検討するなど、建設的な姿勢を保ちましょう。
- 感謝とリスペクトを忘れない: 協力してくれたメンバーには、必ず感謝の気持ちを伝えましょう。日頃からチームメンバーへのリスペクトを示すことも、いざという時の協力に繋がります。
- 「Win-Win」の関係を目指す: 依頼する側だけでなく、依頼される側にとっても、成長の機会になったり、チームへの貢献を実感できたりするような関係を目指すことが理想です。
まとめ
チームでのタスク依頼や協力要請は、自身の業務を円滑に進めるためだけでなく、チーム全体のパフォーマンス向上にとっても非常に重要なコミュニケーションです。アサーションスキルを活用することで、相手を尊重しながら、具体的かつ誠実に依頼・協力要請を行うことができます。
今回ご紹介した表現例や練習方法を参考に、ぜひ日々の業務の中でアサーションを用いた依頼を実践してみてください。最初は難しく感じるかもしれませんが、小さな成功を積み重ねることで、自信を持ってチームメンバーと協力し合い、より良いチームワークを築いていくことができるはずです。抱え込みの悩みを解消し、自身の能力もチームの力も最大限に引き出していきましょう。