場面別アサーション

チームの意見対立を建設的に解決するアサーション術

Tags: アサーション, ビジネスコミュニケーション, チームワーク, 意見対立, 合意形成, 自己表現, 人間関係

多くのビジネスシーンにおいて、チームで仕事を進める上で意見の対立は避けられないものです。お互いの考えが異なるのは自然なことですが、その意見の衝突をどのように乗り越え、建設的な合意形成へと導くかは、チームの成果に大きく影響します。

意見の対立を苦手と感じ、発言を控えてしまったり、相手に合わせて自分の意見を押し殺してしまったりする方もいらっしゃるかもしれません。また、逆に感情的に反論してしまい、話し合いがこじれてしまう経験をお持ちの方もいるでしょう。

このような課題を解決し、チーム内のコミュニケーションを円滑に進めるために役立つのが「アサーション」というスキルです。アサーションを身につけることで、相手を尊重しながらも自分の意見や立場を誠実に伝え、より良い解決策を見出す道が開けます。

チーム内の意見対立におけるアサーションの重要性

アサーションとは、相手の人権を尊重しつつ、自分自身の権利や意見、感情、信念などを率直かつ誠実に表現するコミュニケーションスキルです。単なる自己主張や一方的な意見の押し付けとは異なります。

チーム内の意見対立の場面でアサーションが重要になる理由はいくつかあります。

  1. 健全な議論の促進: メンバーそれぞれが率直に意見を伝えられる雰囲気を作ることで、多角的な視点からの検討が可能になり、より質の高い結論に繋がりやすくなります。
  2. 誤解の解消: 曖昧な表現や遠慮がちな伝え方を避け、自分の意図を明確にすることで、誤解やすれ違いを防ぐことができます。
  3. 相互理解の深化: 自分の考えを伝え、相手の考えを理解しようと努める過程で、メンバー間の信頼関係が築かれます。
  4. ストレスの軽減: 言いたいことを我慢したり、不本意ながら相手に合わせたりすることから生じるストレスを軽減し、より健全な精神状態で業務に取り組めます。

具体的なビジネスシーンでのアサーション表現

ここでは、チーム内で意見が対立する可能性のある具体的な場面を想定し、アサーティブな表現の例をご紹介します。

シーン1:提案された計画案に懸念がある場合

チームリーダーやメンバーから新しいプロジェクトの計画案が提案されたが、実行可能性やリスクについて懸念を感じている。

シーン2:複数の意見が出て、自分の意見も伝えたいが割り込みにくい場合

チームミーティングで活発な議論が行われており、複数の意見が出ているが、自分の意見も聞いてもらいたい。

シーン3:合意形成に向けて、妥協案や代替案を提案したい場合

意見が対立し、議論が平行線をたどっている状況で、両者の落としどころとなるような案を提示したい。

アサーションスキル向上のための具体的な練習方法

アサーションは生まれ持った才能ではなく、後天的に習得できるスキルです。日々の少しずつの練習で、着実に身につけることができます。

  1. 自分の意見や感情を整理する練習(Iメッセージの練習):

    • 練習方法:「私は〜と感じる」「私は〜と考える」「私は〜したい」といった「私」を主語にした文(Iメッセージ)を作る練習をします。日記に書いたり、信頼できる人に話したりするのも良いでしょう。例えば、「〇〇さんの発言を聞いて、私は△△だと感じました」「この計画案について、私は□□という点で不安を感じています」のように、事実と自分の内面を結びつけて表現する練習をします。
    • 目的:自分の内面を正確に捉え、それを言葉にする習慣をつけます。
  2. 相手の意見を正確に理解する練習(傾聴・リフレクティング):

    • 練習方法:チームメンバーや友人との会話の中で、相手の話を注意深く聞き、相手が言ったことや感じていることを、自分の言葉で言い換えて確認する練習をします。「つまり、〇〇ということですね?」「△△と感じていらっしゃるのですね?」のように確認します。
    • 目的:相手の意図や背景を正確に理解する能力を高め、一方的なコミュニケーションを防ぎます。
  3. 建設的な言葉を選ぶ練習:

    • 練習方法:攻撃的または受動的な表現を、アサーティブな表現に言い換える練習をします。例えば、「なんで〇〇してくれないんですか!」(攻撃的)を「〇〇していただけると助かります」(アサーティブ)に、「いいです、私がやります」(受動的)を「申し訳ありません、今は他のタスクで手一杯ですので、△△さんに相談していただけますでしょうか」(アサーティブ)のように言い換えます。
    • 目的:感情的にならず、相手への配慮を忘れずに、自分の意図を効果的に伝える言葉遣いを習得します。
  4. ロールプレイング:

    • 練習方法:チームメンバーや友人、家族など、信頼できる相手に協力してもらい、想定される意見対立の場面を再現してロールプレイングを行います。自分がアサーティブな発言をする練習だけでなく、相手役として様々な反応をしてもらうことで、臨機応変に対応する練習にもなります。
    • 目的:実際の状況に近い形で練習し、実践への抵抗感を減らします。
  5. 小さな意見表明から始める:

    • 練習方法:いきなり大きな意見対立の場で完璧なアサーションを目指す必要はありません。まずは、賛成の意を示す、簡単な質問をする、感謝を伝える、といった比較的小さな場面で自分の意見や感情を言葉にする練習から始めます。例えば、会議で「〇〇さんの意見に賛成です。私も△△だと思います。」と一言加えるなどです。
    • 目的:成功体験を積み重ね、自信をつけていきます。

チーム内の意見対立にアサーティブに向き合うための心構え

アサーションを実践する上で、いくつかの心構えを持つことが助けになります。

まとめ

チーム内の意見対立は、成長の機会でもあります。アサーションスキルを活用することで、意見の衝突を恐れることなく、むしろそれを力に変えて建設的な合意形成を進めることができるようになります。

アサーションは、練習すれば誰でも習得できるスキルです。今回ご紹介した具体的な表現や練習方法を参考に、まずは小さな一歩から踏み出してみてください。チーム内のコミュニケーションが円滑になり、より生産的で協力的な関係を築いていくことができるはずです。