場面別アサーション

このタスク、誰がどこまで?アサーションで明確にする役割分担と期待値の伝え方

Tags: アサーション, ビジネスコミュニケーション, チームワーク, 役割分担, 期待値

曖昧な役割分担や期待値のズレが引き起こす問題

ビジネスの現場では、新しいプロジェクトやタスクが立ち上がる際に、担当者の役割や期待される成果について、曖昧なまま進んでしまうケースが少なくありません。こうした状況は、後々以下のような問題を引き起こす可能性があります。

読者の皆さまの中には、こうした経験をお持ちの方もいらっしゃるかもしれません。特に、依頼を断るのが苦手だったり、会議で確認の質問をするのをためらってしまったりする場合、曖昧な指示をそのまま受け入れてしまいがちです。

このような状況を改善し、チーム全体の効率を高め、自分自身の業務を適切に管理するためには、「アサーション」を用いた期待値のすり合わせが非常に有効です。

期待値すり合わせにおけるアサーションの重要性

アサーションは、相手の意見や感情を尊重しつつ、自分の考え、感情、要求を率直かつ誠実に伝えるコミュニケーションスキルです。期待値のすり合わせにおいて、アサーションは単なる「確認」に留まらず、相互の認識を一致させ、誤解を防ぐための重要な役割を果たします。

アサーションを用いることで、相手を責めることなく、「私はこう認識している」「私には〇〇が必要です」という形で、建設的にコミュニケーションを進めることができます。これにより、不必要な衝突を避けつつ、互いが納得する形で期待値を調整することが可能になります。

具体的な場面で使えるアサーション表現と意図

ここでは、ビジネスシーンでよく直面する期待値すり合わせの場面を想定し、具体的なアサーション表現とその意図を解説します。

場面1:新しいタスクを依頼されたが、内容や期待が不明確な場合

上司や同僚からタスクを依頼されたものの、「ちょっとこれお願い」「〇〇について調べておいて」といったように、指示が抽象的で具体的な内容や、どのレベルの成果を求められているのかが分かりづらい状況です。

使えるアサーション表現例:

  1. 「このタスクについて、いくつか確認させて頂けますでしょうか?」
  2. 「具体的にどのようなアウトプットを期待されていますか?例えば、レポート形式でまとめるイメージでしょうか、それとも箇条書きで十分でしょうか?」
  3. 「タスクの範囲について、私の認識では〇〇までと考えておりますが、こちらの理解で合っておりますでしょうか?」
  4. 「完了の期日は△△ですね。この期日までに求めるレベル感について、認識をすり合わせさせていただけますか?」
  5. 「このタスクを進める上で、〇〇の情報や、△△部署の協力は必要になりますでしょうか?」

表現を選ぶ理由や意図:

場面2:チーム内でタスクが進んでいるが、役割分担や進捗が曖昧になっている場合

プロジェクト進行中、担当が明確でなかったり、複数の人が似たような作業をしていたり、逆に誰も担当していない部分があったりする状況です。

使えるアサーション表現例:

  1. 「皆様、〇〇タスクの件で、現状の役割分担について一度確認させていただけますでしょうか。」
  2. 「△△の部分は、どなたがご担当されていますか?もし未割当でしたら、私が担当することも可能です。」
  3. 「この工程について、私の担当範囲はここまでで、この先は〇〇さんのご担当という認識で合っておりますでしょうか?」
  4. 「全体の進捗状況を把握するため、皆様の現在の状況を簡単に共有いただけますでしょうか?私の担当している部分は現在◇◇の段階です。」
  5. 「このタスクについて、必要な協力や情報がありましたら、遠慮なくお申し付けください。私も可能な範囲でサポートさせていただきます。」(これは相手への貢献意思のアサーションですが、期待値のすり合わせに繋がります)

表現を選ぶ理由や意図:

場面3:自分の作業状況や認識を共有し、相手の期待値を調整したい場合

タスクを進める中で、当初の想定よりも時間がかかっている、あるいは特定の前提が崩れたため計画変更が必要になったなど、自分の状況を正直に伝え、相手の期待値を現実的なものに調整したい状況です。

使えるアサーション表現例:

  1. 「〇〇タスクの進捗について、現在のご状況をご共有させて頂けますでしょうか。」(相手から聞かれる前に自分から報告する)
  2. 「このタスクについて、当初の見込みよりも〇〇の点で時間を要しており、現在◇◇の段階です。」
  3. 「△△の情報が得られていないため、当初予定していた方法から□□に変更する必要がありそうです。現状をご報告させて頂き、今後の進め方についてご相談させて頂けますでしょうか。」
  4. 「誠に申し訳ございませんが、現在の私の業務負荷を鑑みますと、このタスクを△△期日までに完了するのが難しい可能性が出てきました。現状をご説明させて頂き、期日やタスク内容について調整をご相談させて頂けますでしょうか。」
  5. 「この点について、私の認識ではこのように理解しておりますが、〇〇さんの期待されていることと合致しておりますでしょうか?」

表現を選ぶ理由や意図:

期待値すり合わせのアサーションスキルを向上させるための練習方法

アサーションは、練習によって誰でも習得できるスキルです。特に期待値のすり合わせに必要なアサーションを身につけるために、以下のステップで取り組んでみましょう。

ステップ1:自分の「苦手な場面」を特定する(自己分析)

ステップ2:場面ごとの「理想的なアサーション表現」を書き出す

ステップ3:小さな場面から実践してみる(スモールステップ)

ステップ4:ロールプレイングで練習する

ステップ5:実践を振り返り、改善を続ける

アサーションを行う上での心構えとポイント

まとめ

ビジネスにおける役割分担や期待値の曖昧さは、業務効率の低下や人間関係の悪化を招く可能性があります。アサーションを用いることで、相手を尊重しつつ、自分の認識や必要な情報を誠実に伝え、建設的な期待値のすり合わせが可能になります。

具体的なアサーション表現を学ぶこと、そしてそれを実際のビジネスシーンで少しずつ練習することによって、期待値のズレによる問題を減らし、よりスムーズで効率的なコミュニケーションを実現できるようになります。

今回ご紹介した表現例や練習方法を参考に、ぜひ日々の業務の中でアサーションを実践してみてください。継続することで、自信を持って役割や期待値を明確に伝えられるようになるでしょう。