「他部署が動かない…」を解決!アサーションでスムーズに協力を得る表現と伝え方
他部署との連携、協力をスムーズに得るためのアサーション
ビジネスシーンにおいて、自部署だけで業務を完遂することは稀です。多くの場面で、他部署との連携や協力が必要不可欠となります。しかし、「依頼してもなかなか動いてもらえない」「忙しそうで声をかけづらい」「どう伝えれば協力してもらえるのか分からない」といった悩みを抱え、業務が滞ってしまったり、全て自分で抱え込んでしまったりする方も少なくありません。
このような時、一方的に要求するのではなく、かといって遠慮しすぎるのでもなく、相手を尊重しながら自分の要望や状況を誠実に伝えるコミュニケーションスキルである「アサーション」が非常に役立ちます。
このアサーションを効果的に活用することで、他部署との関係性を良好に保ちつつ、必要な協力をスムーズに得ることが可能になります。本記事では、他部署からの協力を得るのが難しいと感じる具体的な状況を想定し、すぐに使えるアサーション表現の例文と、その実践に役立つ練習方法を解説します。
なぜ他部署への協力依頼にアサーションが必要なのか
他部署への協力依頼がうまくいかない原因は様々ですが、多くの場合、コミュニケーションに課題があります。
- 依頼内容が不明確: 何をしてほしいのか、なぜ必要なのかが相手に伝わらない。
- 一方的な依頼: 相手の状況(忙しさ、他の優先業務)を考慮せずに依頼する。
- 遠慮しすぎ: 申し訳ないという気持ちが先立ち、要望が曖昧になる、期日を明確に伝えられない。
- 関係性の問題: 日頃からのコミュニケーションが不足しており、協力しにくい雰囲気がある。
アサーションは、これらの課題解決に貢献します。自分のニーズや状況を正直かつ具体的に伝えることで、相手は依頼内容を正確に理解しやすくなります。また、相手の立場や状況への配慮を示すことで、協力的な関係性を築きやすくなります。単なる依頼ではなく、共に目標を達成するための「協力」という視点を共有することにも繋がります。
具体的なビジネスシーン別:協力を得るアサーション表現
ここでは、他部署への協力依頼で直面しやすい場面を想定し、具体的なアサーション表現とそのポイントをご紹介します。
シーン1:協力してほしい業務があるが、相手が忙しそうで声をかけづらい
相手の状況を推測して諦めるのではなく、まずは丁寧な形で状況を確認し、協力の可能性を探ります。
アサーション表現例:
- 「〇〇さん、今少しお時間よろしいでしょうか?(相手が応じた後)お忙しいところ恐縮なのですが、△△の件で少々ご相談させていただけますでしょうか。〇〇さんの部署のご協力が必要になる可能性がありまして。」
- 「山田さん、今週は非常に慌ただしいと伺っております。もし可能でしたら、来週以降で結構なのですが、一点、□□に関するご相談のお時間を頂戴できますでしょうか?恐らく30分程度で済むかと存じます。」
ポイント: * 相手の状況への配慮を最初に伝えることで、話しやすい雰囲気を作ります。 * 何の件で、どの程度の時間が必要かなど、具体的な情報を添えると相手は対応を検討しやすくなります。 * すぐにでなくても良い、という選択肢を示すことも有効です。
シーン2:依頼したが、相手から「忙しい」「今は無理だ」と言われた
相手の状況を理解しつつ、代替案の検討や、協力の必要性を誠実に伝えます。
アサーション表現例:
- 「承知いたしました。今お忙しい状況とのこと、大変ですね。この件は〇〇様への報告に必要な情報で、△△までに頂戴できると助かります。もし、期日までにご対応が難しいようでしたら、一部の情報だけでも先にいただくことは可能でしょうか?あるいは、別の担当の方にご相談させていただくことはできますでしょうか?」
- 「山田さん、現在はご対応が難しいとのこと、承知いたしました。この依頼は、□□のプロジェクトを推進する上で、山田さんの専門知識がどうしても必要になるため、ご相談させていただきました。もし、現時点で対応可能な時期の見込みなどございましたら、ご教示いただけますでしょうか。それによってこちらの計画も調整いたします。」
ポイント: * まず相手の状況を受け止め、「承知いたしました」などと伝えます。 * なぜその協力が必要なのか、その協力が得られないとどうなるのか、「私(たち)」にとってどのような影響があるのかを具体的に伝えます。(例:「〇〇様への報告に必要な」「プロジェクト推進に不可欠」) * 代替案(一部だけでも、別の担当者、時期の調整など)を提示することで、相手も協力の方法を検討しやすくなります。
シーン3:依頼内容が複雑で、相手にうまく伝わらない、認識がズレている
具体的な事実や状況を共有し、共通認識を持つことを目指します。一方的に責めるような口調は避けます。
アサーション表現例:
- 「先ほどご説明させていただいた△△の件ですが、私の伝え方が不十分だったかもしれません。現在、顧客から□□に関する問い合わせが増えており、その対応のために〇〇さんの部署で管理されている最新のデータが必要な状況です。具体的には、エラーコードXXXの発生頻度と、その原因特定の進捗について、現状把握のためにご協力をお願いしたいと考えております。」
- 「山田さん、ご連絡ありがとうございます。いただいた情報について確認させてください。私が想定していた内容と一部異なる点があるように感じたのですが、これは私の理解不足かもしれません。私の認識では、□□に関するデータは〜〜といったフォーマットで出力可能と考えておりましたが、認識に誤りはございますでしょうか?」
ポイント: * 「私の伝え方が不十分で」「私の理解不足かもしれません」のように、まず自分にベクトルを向けることで、相手の身構えを解きます。 * 事実に基づいた状況説明(顧客からの問い合わせ増、最新データが必要な理由など)を具体的に行います。 * 相手の認識を確認し、共通認識を持つための質問を投げかけます。
シーン4:協力の期日が守られず、業務に遅延が発生している
事実に基づき状況を伝え、期日通りに進めることの重要性や影響を冷静に伝えます。
アサーション表現例:
- 「〇〇さん、先日△△の件で□月□日までにご協力をお願いしておりましたが、現状はいかがでしょうか?この情報が届かないと、その後の工程である製品テストに進めず、結果的に全体の納期に影響が出る状況です。」
- 「山田さん、先日の会議で□月□日を期日と設定させていただいた件ですが、現在の進捗を教えていただけますでしょうか。このタスクが完了しないと、次のステップである顧客への提案資料作成が進められず、プロジェクト全体のスケジュールに遅延が発生する懸念がございます。もし期日までに難しいようでしたら、対応可能な最も早い時期をご教示いただけますでしょうか。」
ポイント: * まずは事実(期日、現在の状況)を冷静に確認します。 * その協力が得られないことによる具体的な影響(次の工程に進めない、納期に影響、スケジュール遅延など)を私(たち)の状況として伝えます。 * 責めるのではなく、問題解決に向けて、対応可能な代替案や時期の確認を行います。
他部署への協力依頼でアサーションを実践するための練習法
アサーションスキルは、知識として知っているだけでなく、実際に使ってみることで身につきます。他部署への協力依頼でアサーションを実践するための練習方法をいくつかご紹介します。
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協力依頼の「理由」を明確にする練習:
- 誰に、何を、いつまでに、なぜ協力してほしいのかを箇条書きで整理します。
- 特に「なぜ(協力が必要な理由)」を、「その協力が得られないと自分や部署の業務にどう影響するか」という視点で具体的に言語化する練習をします。(例:「データが欲しい」→「顧客からの問い合わせに回答し、信頼を維持するために、最新のデータが必要」)
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想定される相手の反応を考える練習:
- 依頼した際に、相手が「忙しい」「難しい」「必要ない」といった反応をする可能性を想定します。
- それぞれの反応に対して、どのように受け止め、どのようなアサーションで応答するか、いくつかのパターンを事前に考えておきます。(例:「忙しい」→「承知いたしました。では一部だけ、あるいは来週以降で…」)
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「私」メッセージの練習:
- 相手の行動を主語にするのではなく、「私は〜と感じる」「私(たち)は〜の状況にある」という「私」を主語にした表現で、自分の状況や感情を伝える練習をします。(例:「なぜやってくれないんですか?」→「この情報がないと、私は次の工程に進めず困っています」)
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具体的な協力内容を伝える練習:
- 抽象的な依頼(例:「あの件よろしく」)ではなく、具体的に「〇〇のシステムから△△の期間のデータをエクセル形式で抽出していただきたい」のように、協力してほしい内容を明確に伝える練習をします。
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独り言やセルフロールプレイング:
- 実際に想定されるシーンを思い浮かべ、声に出してアサーション表現を練習します。相手役のセリフも自分で考え、それにどう応答するか練習することで、本番でのとっさの対応力が向上します。
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小さな依頼から実践:
- まずはリスクの少ない、簡単な協力依頼(例:ちょっとした情報の確認、資料の場所を教えてもらうなど)からアサーションを使ってみます。成功体験を積み重ねることで、自信を持ってより重要な依頼にも臨めるようになります。
アサーションを行う上での心構え
他部署への協力依頼においてアサーションを実践する上で、いくつかの心構えを持つことが重要です。
- 相手への敬意を持つ: 相手も自身の業務を抱えています。その状況を理解し、敬意を持って依頼することで、協力的な関係性が築きやすくなります。
- 事実に焦点を当てる: 感情的にならず、客観的な事実や自身の状況に基づいて伝えます。
- 完璧を目指さない: 全ての依頼がスムーズにいくわけではありません。重要なのは、相手を尊重しつつ、誠実に伝える努力を続けることです。
- 継続する: 一度や二度で劇的に変わらなくても、アサーションを意識したコミュニケーションを続けることで、徐々に関係性や協力体制が改善されていきます。
まとめ
他部署との連携における協力依頼は、ビジネスを円滑に進める上で避けては通れないコミュニケーションです。「断れない」「うまく伝えられない」といった悩みを持つ読者の皆様にとって、アサーションは非常に強力なツールとなり得ます。
本記事でご紹介した具体的なアサーション表現や練習方法を参考に、ぜひ今日から実践してみてください。相手を尊重しながらも、自分の状況や要望を誠実に伝えるアサーションを積み重ねることで、他部署との関係性をより良好にし、必要な協力をスムーズに得られるようになるはずです。一歩ずつ練習を重ね、自信を持って他部署との連携を進めていきましょう。