場面別アサーション

同僚・部下のミス、どう指摘する?アサーションで関係を壊さず伝える方法

Tags: アサーション, ビジネスコミュニケーション, 指摘, フィードバック, 人間関係

同僚・部下のミスや気になる行動、どう指摘すれば良いのか?

ビジネスシーンでは、同僚や部下の仕事のミス、あるいはチームの円滑な進行を妨げるような行動に気づくことがあるものです。例えば、提出された資料に明らかな間違いがある、約束の期日を守れていない、他のメンバーに不快な印象を与える言動が見られる、といったケースです。

このような状況で、「相手に悪く思われたくない」「関係がギクシャクするのが怖い」といった気持ちから、指摘することをためらってしまう方も少なくないかもしれません。しかし、指摘せずにそのままにしておくと、問題が解決されないばかりか、業務に支障が出たり、チーム全体の士気が低下したりする可能性もあります。また、自分自身がそのミスのフォローに追われたり、不満を抱え込んだりすることにもつながりかねません。

かといって、感情的に非難したり、一方的に決めつけたりするような伝え方をしてしまうと、相手を傷つけたり、反発されたりして、かえって関係を悪化させてしまうリスクもあります。

では、どのように伝えれば、相手を尊重しつつ、建設的に状況を改善へと導くことができるのでしょうか。その答えが、アサーションです。

アサーションで建設的に指摘する重要性

アサーションは、相手の意見や感情を尊重しながら、自分の意見、気持ち、要求を正直かつ率直に伝えるコミュニケーションスキルです。このアサーションを用いることで、同僚や部下への指摘を、非難ではなく、より良い状況を作るための建設的なフィードバックとして伝えることが可能になります。

アサーションによる指摘のメリットは以下の通りです。

このように、アサーションは「言いにくいこと」を伝える場面でこそ、その真価を発揮するスキルと言えるでしょう。

具体的な場面とアサーション表現例

それでは、具体的なビジネスシーンを想定し、アサーションを用いた指摘の表現例を見ていきましょう。アサーションの基本は、「事実を客観的に伝える」「自分の感情や影響を『私』を主語にして伝える」「相手への要望や提案を具体的に伝える」というステップです。

場面1:同僚の提出資料に間違いがある場合

場面2:部下が納期を守れていない場合(遅延報告がないなど)

場面3:他部署の担当者が約束した対応をしていない場合

場面4:チームメンバーの言動が他のメンバーに悪影響を与えている場合

これらの例に共通するのは、感情をぶつけるのではなく、客観的な事実に基づき、自分の気持ちや状況への影響を率直に伝え、相手への要望や提案を具体的かつ丁寧に行うというアサーションの構造です。

アサーションスキル向上のための練習方法

同僚や部下への指摘は、特に難易度が高く感じられるアサーションの一つかもしれません。スムーズに、そして建設的に伝えられるようになるためには、段階を踏んだ練習が有効です。

  1. ステップ1:状況と自分の感情・考えを整理する

    • まず、何が問題なのか、具体的な事実を整理します。「いつ、誰が、何を、どうした」という客観的な情報に焦点を当てましょう。
    • その事実に対して、自分がどのように感じているか(例:「困っている」「懸念している」)、なぜ指摘しようと思ったのか(例:業務に支障が出る、チームに悪影響がある)、といった自分の内面を整理します。
    • この際、DESC法(Describe, Express, Specify, Consequence/Choose)のようなフレームワークを参考に、伝えるべき要素(描写・感情・提案・結果)を洗い出すと効果的です。
  2. ステップ2:伝える内容を組み立てる

    • ステップ1で整理した要素をもとに、実際に相手に伝える言葉を組み立てます。
    • 「〇〇という事実がありましたね。私はそれについて△△と感じています。ですので、今後□□のようにしていただけると助かります(あるいは、一緒に〜できませんか)。」という基本的な形を意識します。
    • より丁寧にするために、「お忙しいところ恐縮ですが」「もしよろしければ」といったクッション言葉を適宜加えます。
    • 相手の状況や関係性に合わせて、言葉遣いや表現を調整する練習も重要です。
  3. ステップ3:声に出して練習する

    • 頭の中で考えただけでは、いざという時に言葉が出てこなかったり、ぎこちなくなったりしがちです。
    • 実際に声に出して、組み立てたフレーズを言ってみましょう。一人で練習する場合は、鏡を見ながら話す、自分の声を録音して聞き返す、といった方法が有効です。
    • 可能であれば、信頼できる同僚や友人に協力してもらい、ロールプレイング形式で練習するのも大変効果的です。相手役に様々な反応をしてもらい、それに対する受け答えを練習することで、実践力が身につきます。
  4. ステップ4:スモールステップで実践する

    • いきなり重大なミスや難しい状況での指摘に挑戦するのはハードルが高いかもしれません。
    • まずは、比較的軽微な状況(例:資料の小さな誤字脱字、ちょっとした連携ミス)で、練習したアサーションを使ってみることから始めましょう。
    • 成功体験を積み重ねることで、自信を持ってより難しい状況にも対応できるようになります。

指摘するアサーションを行う上での心構えとポイント

指摘するアサーションを成功させるためには、いくつかの心構えとポイントがあります。

まとめ

同僚や部下のミスや気になる行動を指摘することは、多くの人にとって心理的なハードルが高いものです。しかし、アサーションというスキルを身につけることで、相手との関係性を不必要に損なうことなく、問題を解決し、チームとしての成長を促すことが可能になります。

アサーションを用いた指摘は、単に「言いたいことを言う」のではなく、事実に基づき、相手を尊重し、自分の誠実な思いや要望を伝えるコミュニケーションです。最初は難しく感じるかもしれませんが、ご紹介した練習方法を参考に、小さな一歩から実践を始めてみてください。

建設的な指摘ができるようになることは、あなた自身のコミュニケーション能力を高めるだけでなく、周りの人々との信頼関係を深め、より快適で生産的な職場環境を作るためにも、非常に価値のあるスキルとなるはずです。