会議・MTGで「伝わる」考えをまとめて明確に伝えるアサーション術
会議やミーティングは、チームや組織の意思決定、情報共有、問題解決にとって非常に重要な場です。しかし、「自分の考えをうまく言葉にできない」「発言しても意図が伝わらない」といった悩みを抱え、会議で黙ってしまう、あるいは発言しても手応えを感じられないという方は少なくありません。
特に、日々の業務に追われながらも、会議で求められる貢献や建設的な議論への参加に難しさを感じている読者の皆さまもいらっしゃるでしょう。ここでは、会議やミーティングにおいて、自分の考えや意見を「伝わる」形で表現するためのアサーションスキルと、その具体的な実践方法について解説します。
会議での「伝わらない」はなぜ起こる?
会議で自分の考えが伝わらない主な原因の一つは、思考の整理が不十分なまま発言してしまうことです。頭の中では理解しているつもりでも、それを論理的に組み立てて相手に分かりやすく伝えるスキルが不足していると、話が脱線したり、結論が見えにくくなったりします。
また、「どう思われるか不安」「反論されたらどうしよう」といった心理的なハードルも、発言をためらわせたり、自信のない伝え方になったりすることにつながります。アサーションは、このような状況を改善し、相手を尊重しながらも自分の意見や要求を誠実に伝えるための有効なコミュニケーションスキルです。
会議でアサーションが重要な理由
会議においてアサーションスキルを用いることは、単に「発言する」こと以上の価値があります。
- 貢献度の向上: 自分の視点やアイデアを明確に伝えることで、議論に新たな視点をもたらし、より良い意思決定に貢献できます。
- 認識のすり合わせ: 不明点や懸念を質問・表明することで、認識のずれを防ぎ、後々の手戻りを減らすことができます。
- 信頼関係の構築: 誠実かつ論理的に自分の意見を伝える姿勢は、周囲からの信頼を得ることにつながります。
- 自己成長の促進: 自分の考えを整理し、建設的に表現する練習は、思考力や言語化能力を高めます。
アサーションは、単に自己主張が強いことではありません。それは、自分も相手も大切にする「誠実な自己表現」です。会議の場では、このスキルが円滑なコミュニケーションと生産的な議論の土台となります。
具体的なビジネスシーンで使えるアサーション表現
ここでは、会議やMTGで自分の考えをまとめて明確に伝えるための具体的なアサーション表現を、シーン別に紹介します。
シーン1:自分の意見や提案を伝える
自分の考えやアイデアを提示する際に、単に「〜だと思います」と述べるだけでなく、その背景や理由を添えることが重要です。
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表現例:
- 「〇〇について、私は〜と考えます。その理由は、〜という現状があり、〜というメリットが期待できるからです。」
- 「提案ですが、〜してみてはいかがでしょうか?〜という点で、現状の課題を解決できる可能性があると考えております。」
- 「△△の件ですが、私の考えを共有させていただけますでしょうか。現状を分析しますと〜であり、これに対して〜というアプローチが有効だと見ております。」
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理由・意図:
- 「私」を主語にすることで、自分の考えであることを明確にします。(I Message)
- 理由や背景をセットで伝えることで、発言の根拠が明確になり、相手は内容を理解しやすくなります。
- 「〜と考えております」「〜と見ております」といった丁寧な表現で、断定を避けつつ自身の見解を示します。
- 「提案ですが」と前置きすることで、相手に検討を促すスタンスを示します。
シーン2:複雑な状況や考えを整理して伝える
多くの情報や意見が飛び交う中で、議論の構造や自身の考えのポイントを整理して伝える際に役立ちます。
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表現例:
- 「一旦、現状を整理させていただけますでしょうか。現在、課題は大きく分けてAとBの2点にあるかと思います。Aについては〜、Bについては〜という状況です。」
- 「この件について、私の考えのポイントは3つあります。まず一点目は〜、二点目は〜、そして三点目は〜です。」
- 「議論の論点は〜と〜の2つに絞れるかと思います。これについて、私は〜と考えております。」
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理由・意図:
- 「現状を整理させていただけますでしょうか」と合意を得ることで、発言の目的を共有し、聞き手の準備を促します。
- ポイントの数を先に伝えることで、聞き手は話の全体像を掴みやすくなります。(例: ポイントは3つです→聞き手は3つの情報が来ることを予測する)
- 複雑な情報を構造化して伝えることで、内容が分かりやすくなります。
シーン3:反論や疑問を建設的に伝える
相手の意見に対し、同意できない点や疑問点を伝える際に、関係性を損なわずに建設的に伝えるための表現です。
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表現例:
- 「〜さんのご意見、大変よく分かりました。その上で、〜という点については、少し異なる懸念がございます。それは、〜というリスクが考えられるためです。」
- 「△△という方向性について、もう少し詳しくお伺いしてもよろしいでしょうか?特に〜の部分について、理解を深めたいと考えております。」
- 「そのデータについて、私の認識と少し異なる点があるのですが、確認させていただけますでしょうか?私が把握している限りでは、〜という情報でした。」
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理由・意図:
- まず相手の意見を受け止め、理解を示してから(クッション言葉)自分の意見や疑問を伝えます。
- 「異なる懸念」「認識と異なる点」といった言葉を選び、相手の意見そのものを否定するのではなく、自身の視点や認識の違いを伝えます。
- 疑問点は質問形式で投げかけ、相手からの情報を引き出す意図を明確にします。
シーン4:補足や同意を伝える
他の参加者の発言に対し、同意や補足情報を加えることで、議論への参加意識を示し、議論を深めます。
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表現例:
- 「〜さんのご意見に大変賛成です。加えて、〜という視点も重要かと考えております。」
- 「△△という点は非常に重要ですね。特に〜という部分が、私たちが注力すべきポイントだと感じました。」
- 「〜さんのご指摘通りだと思います。補足させていただきますと、〜という背景もございます。」
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理由・意図:
- 相手の意見への同意や評価を先に伝えることで、相手を尊重する姿勢を示します。
- 「加えて」「補足させていただきますと」といった言葉で、自身の発言が前の発言に紐づいていることを示し、議論の流れをスムーズにします。
アサーションスキルを向上させるための具体的な練習方法
会議でのアサーションスキルは、意識的な練習によって確実に向上させることができます。ここでは、読者の皆さまが一人でも取り組める具体的な練習方法を紹介します。
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会議の準備段階で思考を整理する練習:
- 会議の議題に対し、自分が知っている情報、考えられる論点、自分の意見や疑問点を箇条書きやマインドマップなどで書き出してみましょう。
- 特に、自分の意見を伝える場合は、「結論→理由→具体例」といった構造(PREP法など)を意識して整理する練習をします。話したい内容を事前に3つのポイントに絞ってみるのも効果的です。
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伝えたいことを声に出してみる練習:
- 整理した自分の意見や質問を、実際に声に出して言ってみましょう。一人でいる時に、会議での場面を想定して練習します。スマートフォンなどで録音して聞き返すと、客観的に自分の話し方や構成を確認できます。
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「I Message」で表現する練習:
- 意見を述べる際に、「あなたは〜」「〜すべきだ」ではなく、「私は〜と感じます」「私は〜と考えます」といった「I Message」で表現する練習を繰り返します。これにより、主観と客観を分け、相手を責めるニュアンスなく自分の内面を伝える習慣がつきます。
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小さな発言から始める:
- いきなり込み入った意見を述べるのが難しければ、まずは「〇〇について質問があります」「〜さんの意見に賛成です」「〜という点は確認させてください」といった、短く明確な発言から始めてみましょう。成功体験を積み重ねることが自信につながります。
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フィードバックを求める:
- 信頼できる同僚や上司に、会議での自分の発言についてフィードバックを求めてみましょう。「話は分かりやすかったか」「どこを改善すればもっと伝わるか」などを具体的に聞くことで、次の実践に活かせます。
会議でアサーションを行う上での心構え
- 完璧を目指さない: 最初から完璧な発言をしようと気負う必要はありません。まずは「少しでも伝わるように意識する」「一言でも発言する」といった小さな目標から始めましょう。
- 事実に基づいて話す: 推測や感情だけでなく、客観的な事実やデータに基づいて意見を構築することを意識します。
- 相手への敬意を忘れない: どんなに意見が異なっても、相手の人格や立場を尊重する姿勢を保ちます。
まとめ
会議やミーティングで自分の考えをまとめて明確に伝えるアサーションスキルは、ビジネスパーソンにとって非常に価値のあるものです。これは生まれ持った才能ではなく、具体的な知識を学び、繰り返し練習することで誰でも習得できます。
ここで紹介した具体的な表現や練習方法を参考に、ぜひ日々の会議で実践してみてください。最初は緊張するかもしれませんが、小さな一歩を踏み出し、少しずつ慣れていくことが大切です。自分の声が議論に加わることで、会議への参加意識が高まり、より建設的な成果につながることを実感できるはずです。自信を持って、あなたの視点を会議の場で共有してください。