「私にできます」を伝える!貢献機会を掴むアサーション表現と練習法
もっと貢献したいのに… 自分の強みや意欲を伝える難しさ
多くのビジネスパーソンが、「今の仕事にもっと積極的に関わりたい」「自分の得意なことを活かしてチームに貢献したい」「新しい分野に挑戦してみたい」といった前向きな意欲を持っています。しかし、いざそれを上司や同僚に伝えようとすると、「出過ぎた真似かな」「今の業務で手一杯だと思われるかも」「どう言葉にすればいいか分からない」と躊躇してしまうことは少なくありません。
特に、普段から自己主張が苦手だと感じている方にとって、自分から積極的に「これをやりたい」「私にできます」と伝えるのは、大きなハードルに感じられることでしょう。結果として、せっかくの貢献機会やスキルを活かせるチャンスを逃してしまい、もどかしい思いを抱えている方もいらっしゃるのではないでしょうか。
この記事では、このような悩みを抱える読者の皆様に向けて、自分の強みや貢献意欲を適切に、そして誠実に伝えるためのアサーション表現と、そのための具体的な練習方法をご紹介します。
強みや貢献意欲を伝えることとアサーション
アサーションとは、相手を尊重しつつ、自分の意見や要求、感情を率直かつ誠実に伝えるコミュニケーションスキルです。単なる自己主張やわがままとは異なり、相手の権利や感情にも配慮しながら、自分自身の権利や感情も大切にする姿勢に基づいています。
自分の強みや貢献意欲を伝える場面において、アサーションは非常に有効な手段となります。なぜなら、アサーションを用いることで、謙遜しすぎて自分の能力を過小評価することも、逆に傲慢に聞こえることもなく、事実に基づいて建設的な形で意欲を示すことができるからです。
適切にアサーションを活用すれば、
- 自分の能力や意欲を正確に伝え、誤解を防ぐことができます。
- チームや組織にとってプラスとなる貢献機会を生み出すことができます。
- 自身のキャリア形成やスキルアップにつながるチャンスを掴むことができます。
- 何よりも、自分の内なる意欲を表現することで、仕事へのモチベーションを高めることができます。
次に、具体的なビジネスシーンを想定し、どのようなアサーション表現が可能かを見ていきましょう。
具体的なビジネスシーンとアサーション表現の例文
自分の強みや貢献意欲を伝える機会は、様々な場面で訪れます。ここでは代表的なシーンをいくつか挙げ、具体的なアサーション表現とそのポイントを解説します。
シーン1:新しいプロジェクトやタスクへの参加意欲を伝える
新しいプロジェクトが立ち上がる際や、特定のタスクの担当者が求められている場面で、「自分なら貢献できる」「ぜひ携わってみたい」と感じることがあります。
- 課題感: 手を挙げるのは勇気がいる、自分に務まるか不安、周りの評価が気になる。
-
アサーション表現の例:
- 「〇〇(プロジェクト名/タスク名)について、△△(自分の過去の経験やスキル)の経験がございますので、□□(具体的な貢献内容)の面でお役に立てるのではないかと考えております。」
- ポイント: 事実(過去の経験)に基づき、具体的な貢献可能性を示す。「お役に立てる」という言葉で、自己利益だけでなくチームへの貢献意欲を伝える。
- 「この分野(例: 新しい技術)に関心があり、ぜひこの機会に携わってみたいと思っております。もしお手伝いできることがあれば、ぜひ参加させていただけないでしょうか。」
- ポイント: 関心や意欲を率直に伝える。一方的な要求ではなく、「お手伝いできることがあれば」「参加させていただけないでしょうか」と提案や依頼の形を取ることで、相手の状況への配慮を示す。
- 「〇〇(プロジェクト名/タスク名)について、△△(自分の過去の経験やスキル)の経験がございますので、□□(具体的な貢献内容)の面でお役に立てるのではないかと考えております。」
シーン2:現状の業務に加え、別の分野や役割に関心があることを伝える
現在の役割に満足しつつも、将来的にもっと広い範囲で貢献したい、新しいスキルを身につけたいといったキャリアに関する希望がある場合です。
- 課題感: 今の業務で手一杯だと思われるのでは、余計なことを考えていると思われるのでは。
-
アサーション表現の例:
- 「現在の〇〇の業務には引き続き責任を持って取り組みつつ、今後のキャリアパスを考える上で、△△(具体的な分野やスキル)にも関心を持っております。」
- ポイント: まず現在の業務への責任感を明確に伝えることで、相手の懸念を和らげる。その上で、将来的な視点での意欲を伝える。
- 「もし将来的に△△に関する業務が発生するようでしたら、ぜひ挑戦させていただきたいと考えております。何か今のうちから準備できることなどございますでしょうか。」
- ポイント: 具体的な希望を伝えつつ、すぐに機会がなくても準備する意欲を示す。「何か準備できることは?」と相手に問いかけることで、一方的な要望ではなく、相談として受け止められやすくなる。
- 「現在の〇〇の業務には引き続き責任を持って取り組みつつ、今後のキャリアパスを考える上で、△△(具体的な分野やスキル)にも関心を持っております。」
シーン3:チームの課題に対し、自分の専門知識や経験から解決策を提案する
チームが直面している問題に対して、自分の持つ知識や経験が役立つと感じた場合です。
- 課題感: 意見を言うのが苦手、自分の意見に自信がない、他の人が既に考えているのでは。
-
アサーション表現の例:
- 「〇〇の課題について、以前△△という状況に直面したことがございます。その際に□□というアプローチを試したのですが、もし参考になるようでしたら、その時の経験をお話しさせていただけたらと思います。」
- ポイント: 事実(過去の経験)に基づき提案する。「もし参考になるようでしたら」と控えめに述べることで、相手に受け入れるかどうかの選択肢を与える。一方的な解決策の押し付けにならない。
- 「この課題に対して、△△という視点からもアプローチできるのではないかと考えております。具体的なデータ(事実)に基づくと、このような結果が予測されます。」
- ポイント: 意見であることを明確にし、「と考えております」と伝える。根拠となる事実(データなど)を示すことで、提案の信頼性を高める。
- 「〇〇の課題について、以前△△という状況に直面したことがございます。その際に□□というアプローチを試したのですが、もし参考になるようでしたら、その時の経験をお話しさせていただけたらと思います。」
貢献意欲を伝えるアサーションを練習するステップ
アサーションスキルは、意識的な練習によって確実に向上します。ここでは、自分の強みや貢献意欲を伝えるための具体的な練習方法をステップ形式でご紹介します。一人でも、あるいは信頼できる相手と一緒にも取り組めます。
ステップ1:自己分析を深める
まず、自分が「何を」「なぜ」貢献したいのかを明確にします。
- 自分の強み、得意なスキル、知識は何ですか?
- どのような業務や分野に関心がありますか?
- なぜその業務や分野に貢献したいのですか?(例: チームの目標達成に貢献したい、新しい技術を学びたい、自身の成長のため、など)
- 具体的にどのような形で貢献できると思いますか?
これらの点を紙に書き出すなどして、整理してみましょう。自分自身が納得できる理由を明確にすることが、自信を持って伝えるための第一歩です。
ステップ2:具体的なシナリオを設定する
実際に伝えたい場面を具体的に想定します。
- 誰に(上司、特定の同僚、チーム全体など)伝えますか?
- どのような状況で伝えますか?(例: 1対1の面談、チームミーティング、チャットなど)
- その場面で伝えたい内容(貢献したい業務、身につけたいスキル、提案したい解決策など)を具体的に設定します。
ステップ3:アサーション表現を作成・推敲する
ステップ1と2で明確にした内容に基づき、実際に伝える言葉を考えてみます。
- 「〜したい」という要望だけでなく、「〜なので、〜という形で貢献できると考えています」のように、理由や根拠、具体的な貢献内容を含めるようにします。
- 主語を「私」にする(Iメッセージ)を意識します。「私は〇〇の経験があるので、このプロジェクトで△△の役割を担えると思います」など。
- 相手への配慮(現在の状況への理解、感謝、相手の意見を聞く姿勢など)を示す言葉を加えることを検討します。「お忙しいところ恐縮ですが」「もしよろしければ」「〜について、どう思われますか?」など。
- 声に出して読んでみて、自然かどうか、誤解されにくいかを確認します。
ステップ4:小さな実践から始める
いきなり重要な場面で完璧に伝えようとせず、まずは比較的ハードルの低い場面から試してみましょう。
- 会議後の個別フォローで、補足の意見や関心のある点について一言述べる。
- チーム内のチャットで、簡単な情報提供や提案をしてみる。
- 1対1で話しやすい同僚に、自分の関心事について話してみる。
小さな成功体験を積み重ねることが、自信につながります。
ステップ5:ロールプレイングを行う
信頼できる同僚や友人、家族などに協力してもらい、想定したシナリオでロールプレイングを行います。
- 実際に声に出して表現を練習します。
- 相手に「どのように聞こえたか」「どのような印象を受けたか」などのフィードバックをもらいます。
- 緊張する状況に慣れる練習にもなります。
ステップ6:実践と振り返りを繰り返す
実際のビジネスシーンでアサーションを実践し、その後で振り返りを行います。
- うまく伝えられた点、難しかった点はどこですか?
- 相手の反応はどうでしたか?
- 次に活かせる学びは何ですか?
完璧を目指さず、継続的に練習と改善を繰り返すことが重要です。
貢献意欲を伝える上で心掛けるべきポイント
アサーションを実践する際には、いくつかの心構えが役立ちます。
- 事実に焦点を当てる: 「〜が得意です」と伝えるだけでなく、「〜の経験があり、△△の実績があります」のように、具体的な事実や根拠を示すことで説得力が増します。
- 貢献への熱意を誠実に伝える: 大げさな言葉を使う必要はありません。なぜ貢献したいのか、どのような点で価値を提供できるのか、その熱意を誠実に伝えることが相手に響きます。
- 相手の状況や視点への配慮: 相手(上司やチーム)の現在の状況や、組織全体の目標などを踏まえた上で伝えることが重要です。「現在の状況を理解した上で、〜」といったクッション言葉を入れることも有効です。
- 拒否されても落ち込みすぎない: アサーションは「伝えた」という行為自体に価値があります。たとえ今回の機会に恵まれなくても、意欲を伝えたという事実は相手の記憶に残り、次の機会につながる可能性があります。結果だけでなく、伝えるという行動を自分自身で評価しましょう。
まとめ:小さな一歩が貢献機会を広げる
自分の強みや貢献したいという前向きな意欲を伝えることは、自己成長やキャリアアップはもちろん、チームや組織全体の活性化にもつながる非常に価値のある行為です。自己表現が苦手だと感じている方も、アサーションのスキルを活用することで、誠実に、そして自信を持って自分の想いを伝えることができるようになります。
ご紹介した具体的な表現例や練習ステップを参考に、ぜひできるところから少しずつ実践してみてください。はじめは緊張するかもしれませんが、小さな一歩を踏み出すことで、きっと新たな貢献機会や可能性が広がっていくはずです。皆さまの貢献意欲が適切に伝わり、活躍の場が広がることを願っております。