日々の努力や成果、適切に伝えるには?アサーションで評価につなげる方法
多くの方が、日々の業務に真摯に取り組み、成果を出すために努力を重ねていらっしゃることでしょう。しかし、その努力や成果が必ずしも周囲に正確に伝わっているとは限らず、「頑張っているのに正当に評価されていない」と感じたり、「自分の貢献をどう伝えたら良いか分からない」と悩んだりすることもあるかもしれません。特に、自己表現が苦手な方にとっては、自身の取り組みを適切に伝えることは、さらなる課題となり得ます。
本記事では、ビジネスシーンで積み重ねた日々の努力や成果を、誠実に、かつ効果的に伝えるためのアサーション表現と、その実践方法について解説します。アサーションスキルを習得することで、正当な評価を得やすくなるだけでなく、周囲との信頼関係を深め、より健全なキャリア形成に繋げることが期待できます。
貢献を伝えるアサーションの重要性
アサーションとは、相手を尊重しながら、自分の考え、感情、要求を誠実に伝えるコミュニケーションスキルです。自己主張が苦手な方の中には、謙遜しすぎてしまったり、自分の成果を話すことにためらいを感じたりする方が少なくありません。その結果、自身の貢献が過小評価されてしまったり、周囲に正確に理解されなかったりすることがあります。
一方、単に自己主張を強く行うだけでは、傲慢に聞こえたり、相手との関係性を損ねたりする可能性があります。アサーションは、この両極端を避け、自分自身の価値や貢献を客観的かつ誠実に伝えることを目指します。日々の努力や成果を適切に伝えるアサーションは、単に評価を上げるためだけではなく、自身の業務に対する責任感や熱意を共有し、周囲からの信頼を得る上でも非常に重要です。
具体的な場面別アサーション表現例
ここでは、日々の努力や成果を伝える具体的なビジネスシーンを想定し、アサーション表現の例文とその意図について解説します。
場面1:チームミーティングや定例報告会で担当業務の成果を報告する
日々の業務で達成したことや、その業務がチームやプロジェクトにどのような影響を与えたかを伝える場面です。単なる事実の羅列ではなく、自身の工夫や貢献度を含めて伝えることが重要です。
- 課題: 事実のみを淡々と報告してしまい、自身の工夫や努力、貢献度が見えにくい。
-
アサーション表現例: 「先週取り組んだ〇〇の件ですが、△△(具体的な状況)でしたので、私は□□という方法でアプローチいたしました。その結果、当初懸念されていた◇◇という課題を解決することができ、結果としてプロジェクトの××(具体的な効果や進捗)に繋がったと考えております。」
-
表現の意図:
- 「〇〇の件ですが」:どの業務について話しているかを明確にします。
- 「△△でしたので、私は□□という方法でアプローチいたしました」:置かれていた状況と、それに対して自身がどのように考え、工夫して取り組んだかを具体的に伝えます。自身の主体性や問題解決能力を示す表現です。
- 「その結果、当初懸念されていた◇◇という課題を解決することができ」:解決した課題や達成したことを具体的に示します。
- 「結果としてプロジェクトの××に繋がったと考えております」:自身の貢献がチームやプロジェクト全体にどのような良い影響を与えたかを伝えます。単なるタスク完了報告ではなく、組織への貢献という視点を含めます。
場面2:上司との1on1や評価面談で今期の取り組みや成果を伝える
自身の評価に直接関わる可能性のある場面です。謙遜しすぎず、かといって過度に自己を主張するのではなく、事実に基づいて誠実に伝える姿勢が求められます。
- 課題: 自身の努力や成果を控えめに伝えすぎてしまい、上司に正当な評価が伝わりにくい。抽象的な表現になりがち。
-
アサーション表現例: 「今期は特に〇〇の目標達成に重点を置き、△△(具体的な活動内容やプロセス)に計画的に取り組みました。その結果、当初の目標であった□□を達成することができ、チーム全体の◇◇(具体的な効果や貢献)に貢献できたと感じております。また、目標外ではございましたが、自主的に××(目標外の取り組み)にも取り組み、これにより△△(具体的な成果)を得られたことも、私の成長に繋がったと感じております。来期は、この経験を活かしてさらに◎◎(具体的な目標や貢献)に取り組んでいきたいと考えております。」
-
表現の意図:
- 「今期は特に〇〇の目標達成に重点を置き...」:自己評価の焦点を明確にします。
- 「△△に計画的に取り組みました」:プロセスにおける具体的な努力や工夫を伝えます。
- 「その結果、当初の目標であった□□を達成することができ...貢献できたと感じております」:達成した事実と、それが組織にもたらした貢献について、自身の「感じ方」を交えて誠実に伝えます。具体的な数値や事例があれば含めます。
- 「目標外ではございましたが、自主的に××にも取り組み、これにより△△を得られたことも...」:目標達成だけでなく、自主的な取り組みや、そこから得られた成果・学びを伝えます。自身の意欲や成長意欲を示します。
- 「来期は、この経験を活かしてさらに◎◎に取り組んでいきたい」:過去の貢献から学び、今後のキャリアや貢献に対する意欲を伝えます。
場面3:同僚や他部署に自身の業務の進め方や価値観を理解してもらう
日々の業務の中で、自分の取り組みの意図や価値観を周囲に理解してもらうことで、より円滑な連携や、自身のプロフェッショナリズムへの理解に繋がります。
- 課題: 自分の仕事のやり方が周囲に誤解されやすい、意図が伝わらず軋轢が生じることがある。
-
アサーション表現例: 「〇〇の業務を進める際には、△△という点を特に大切にしています。これは、結果として□□(具体的な理由や目的、期待される効果)に繋がると考えているからです。このように進めることで、効率的かつ高品質な成果を目指せると考えております。ご理解いただけますと幸いです。」
-
表現の意図:
- 「〇〇の業務を進める際には、△△という点を特に大切にしています」:自身の業務におけるこだわりや価値観を明確に伝えます。
- 「これは、結果として□□に繋がると考えているからです」:なぜその点にこだわるのか、その背景にある考え方や目的を具体的に説明します。理由を伝えることで、相手は納得しやすくなります。
- 「このように進めることで...」:その取り組み方がどのような利点をもたらすかを伝えます。
- 「ご理解いただけますと幸いです」:相手に理解を求める、丁寧な表現です。
アサーションスキル向上のための具体的な練習方法
アサーションは、知識として学ぶだけでなく、継続的に実践することで身につくスキルです。日々の努力や成果を伝えるアサーションを習得するための具体的な練習方法をご紹介します。
ステップ1:自分の「貢献リスト」を作成する(自己分析)
日々の業務で「何にどのように取り組み、どんな成果や影響があったか」を具体的に書き出す習慣をつけましょう。大小に関わらず、目標達成に繋がったこと、工夫したこと、困難を乗り越えたこと、周囲に良い影響を与えたことなどを記録します。これにより、自身の貢献を客観的に把握できるようになり、伝えるべき内容が明確になります。
ステップ2:伝える内容を「見える化」する(スクリプト作成)
報告会や面談などで伝えたい内容を、具体的なアサーション表現を使って文章に書き起こしてみましょう。上記の例文を参考に、事実(Fact)、自身の考えや感情・努力(Feeling/Effort)、それがもたらした影響や今後の展望(Impact/Future)といった要素を盛り込みます。声に出して読む練習をすることで、より自然に、自信を持って話せるようになります。
ステップ3:小さな「伝える」から始める(スモールステップ実践)
いきなり重要な場面で完璧なアサーションを目指すのではなく、まずはリスクの少ない小さな場面から実践してみましょう。例えば、日々の業務報告メールに、単なる完了報告だけでなく、少しだけ具体的な工夫や結果を加えるといったことから始めてみます。成功体験を積み重ねることで、自信に繋がります。
ステップ4:信頼できる人にフィードバックを求める
可能であれば、信頼できる上司や同僚に、自身の報告や話の仕方についてフィードバックを求めてみましょう。客観的な視点からの意見は、自身の話し方や伝え方の改善に役立ちます。
アサーションを行う上での心構えとポイント
貢献を伝えるアサーションを効果的に行うために、いくつかの心構えとポイントがあります。
- 事実に基づいて描写する: 自身の主観だけでなく、具体的な数値、データ、事例など、客観的な事実に根拠を置くことで、信頼性が高まります。
- 主語を「私」にする(I(アイ)メッセージ): 「私は~しました」「私は~と考えました」のように、「私」を主語にすることで、自身の責任範囲や考えを明確に伝えられます。
- 相手への配慮を忘れない: 貢献を伝えることは重要ですが、それが自慢や一方的な主張にならないよう、相手の状況や聞く準備ができているかを考慮し、適切なタイミングとトーンを選ぶことが大切です。感謝の言葉や周囲への配慮も忘れず伝えましょう。
- 完璧を目指さない: 最初から流暢に、完璧に伝える必要はありません。まずは「伝えよう」という意識を持つことが第一歩です。練習を重ねるうちに、徐々にスムーズに伝えられるようになります。
- 結果だけでなくプロセスや工夫も伝える: 達成した結果だけでなく、そこに到達するまでのプロセス、どんな困難があり、どのように工夫して乗り越えたのかを伝えることで、自身の努力や能力がより具体的に伝わります。
まとめ:貢献を伝えるアサーションで、あなたの価値を輝かせる
日々の努力や成果を適切に伝えるアサーションは、単に評価を上げるためのテクニックではなく、自己肯定感を高め、周囲との良好な関係を築き、自身のキャリアを主体的に形成していくための重要なスキルです。
自己表現が苦手だと感じている方も、ご紹介した具体的な表現例や練習方法を参考に、スモールステップで実践を重ねてみてください。あなたの真摯な取り組みと貢献が、周囲に正しく伝わるようになることで、きっと新たな評価やチャンスに繋がるはずです。一歩ずつ、自信を持ってあなたの価値を伝えていきましょう。